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地面の下に着目する農業

リズ・カーライル
Amy Kumler
〈タイムレス・シーズ〉と環境再生型有機農業の可能性

1987年、モンタナ州中央部に〈タイムレス・シーズ〉を設立したデイブ・オイエンと3人の仲間たちは、化学肥料や除草剤を使わずに維持できる農業システムを作るという野心的な目標を掲げていました。当時、この地域で栽培される代表的な一次産品は単一栽培の小麦と大麦だけでした。そこで、タイムレス社は、土壌から栄養素を取り除く単作ではなく、作物の種類を増やし、土壌に栄養素を戻すための輪作に目を向けました。

タイムレス社の創業者たちは、世界各地の伝統的な農法で穀物と家畜、または穀物とマメ科植物を交互に栽培していることに着目しました。マメ科植物は天然の窒素肥料で土壌を豊かにします。自然との調和に優れた戦略ともいえるこの特質を知ったタイムレス社の農家たちは、さっそく土壌を構築する輪作作物として豆類を栽培するようになりました。

同時に収入源も必要だったため、乾燥した土地で短期間に収穫できる豆を探しました。それがレンズ豆だったのです。

それから30年以上経ち、農家が立ち上げたこの会社は、「土から食卓まで」の企業へと成長を遂げ、パタゴニア プロビジョンズのオーガニック・グリーンレンティル・スープとセイバリー・シードの主原料であるレンズ豆の供給元となっています。デイヴは栽培スタッフとともに州全域を訪れ、他の農家にオーガニックのレンズ豆の栽培方法や穀物との輪作、被覆作物を利用した土作りを教えてきました。収穫時期になると、タイムレス社がこれらの農家からレンズ豆を購入し、食品等級まできれいにして、全米の自然食品店に卸しています。

当初、経済的な理由でタイムレス社を求めてきた農家もいました。一次産品の穀物の栽培に必要な高価な農薬や農機具の購入に見合うだけの十分な収入を得ることは容易ではなかったのです。しかし、それだけではありませんでした。多くの農家は地元地域のがんの発症率を懸念し、また除草剤が家族の健康に及ぼす影響を心配していました。

多くの農家や牧場主はまた、炭素が豊富な有機物質は土壌の健康に重要なだけでなく、別の価値があることを認識しはじめました。農業の新たな収入源となりうる炭素隔離です。土壌は地中や地球のまわりを巡回する炭素を世界規模で貯留し、その量は大気圏に蓄えられる量の3倍に上ります。土壌の炭素はすべてが地下深層部に封じ込められているわけではなく、むしろ有機炭素の大半は土壌の上層部1メートル以内にあり、土壌管理の影響を直接受けるのです。

「タイムレス社では、農地全体のシステムという観点から考えている」とデイブは話します。「契約農家が被覆作物を肥料として使っているとしたら、それは農業による温室効果ガス排出の大部分を占める合成窒素肥料を使っていないということだ。つまり、炭素を貯留しているのはもちろん、そもそも炭素の発生を抑えているということなんだ」

私はこれが環境再生型農業の本義だと理解しました。たんに炭素を蓄えるだけでも、壊したものを修復するだけでもない。私たちに命を与えてくれる土壌にお返しをする。この点において、環境再生型有機農業は私たちにできることがまだある、というたしかな証拠です。

この記事は、パタゴニアのブログ「The Cleanest Line」に掲載の『地面の下に着目する農業』(リズ・カーライル著)から一部抜粋し、編集したものです。