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海に潜るシェフ

瀬戸内 千代
生江さんは海の職人である漁業者との対話を大切にしている。写真:武藤 由紀
漁業者から教えられた海の異変を自分の目で確かめようと、素潜りを始めたシェフがいる。海に潜り、命を感じる。料理を通して自然と人間をつなぎ直すために。

編集注記:2022年8月12日にパタゴニア プロビジョンズが開催したインスタライブ「The Ocean Solution(海の解決策)」にゲストとしてお越しいただいた時のお話と事後インタビューをもとに構成しました。

立地や地形に恵まれた日本の海は、世界の中でも特に生物多様性が高い。沿岸に分布する藻場やサンゴ礁は豊かな水産資源を育み、特に藻場はそれを構成する海藻自体も食材となり、私たちの食文化を支えてきた。出汁をとるのに昔から使われてきた昆布はもちろん、海苔、ひじき、わかめ、天草(ところてん、寒天)、もずくなど、日本では多種多様な海藻が日常的に食卓に上る。

ところが、海水温の上昇など近年の環境変化によって、温帯の日本沿岸では高温に弱い海藻が姿を消し、残った海藻も北上してきた藻食性魚などの食害に遭い、全国的に藻場が衰退している。海藻が減れば海藻を餌やすみかに利用している魚や貝なども減ってしまう。熱帯性の藻場やサンゴ礁に置き換わった場所も環境が安定せず、各地で「磯焼け」と呼ばれる海の砂漠化が進行している。

環境に配慮した日本の食材をフランス料理に積極的に取り入れてきたシェフの生江史伸(なまえ・しのぶ)さんにとって、海の異変は見過ごせない問題だった。生江さんが料理長を務めるレストラン「レフェルヴェソンス」(東京・西麻布)は、ミシュランガイドの三つ星に加えて、サステナブルな取り組みの証しであるグリーンスターも獲得している。2022年の「世界海洋デー(6月8日)」にニューヨークの国連本部で開かれた会議では、「海洋の再活性化」をテーマに世界から6人が登壇するセッションがあった。その一人に選ばれた生江さんは、海と食との媒介者であるシェフを代表して、海藻についてスピーチした。

世界海洋デーに国連本部でスピーチした生江シェフ。「海藻のユニークな性質を尊重し思いやりのあるレシピを作ることで、人々の意識をつなぎ共通の認識を持つよう促し、海の再生という共通の目標に向かうように呼びかけたい」と話を結んだ。写真提供:国際連合

生江さんは海藻の魅力を幅広く捉えている。「海の中に漂って、何も与えなくてもその海域が持っている栄養で育つものが、こんなにおいしいのは素晴らしいことです。しかも二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出してくれます。海藻は肥料やバイオ燃料にもなり、医療や美容にも使われ、さらにはプラスチックを代替する新素材にも使えるという研究があります。海藻は、とってもエキサイティングだし、広がりのある素晴らしい存在なんです」

海藻や大豆など植物性たんぱく質を多用する日本食には、医療費の負担を下げたり、温室効果ガスの排出を抑えたりする利点もある。「だから日本の料理文化は世界から注目されています」と生江さん。観光庁の調査でも、日本に来る観光客の目的は「食」が1番だという。

「僕らのレストランはフランス料理ですが素材は99%日本のものを使っています。歴史的に料理文化の中心地はフランスですから、そこに日本料理の影響を与えて少し変化させることで、健康や低炭素につながるアイデアを世界中に振りまけないかなと。そんな想像をモチベーションにして、日本独自の伝統的な素材を取り入れています」

海の幸を一皿に表現する。写真:広瀬 靖子

国内の素材研究に熱心な生江さんは、よく産地を訪れる。そういう時、生産者たちは口々に気温や水温、降雨や生き物の異変を語る。話を聞くうちに「そういえば海の中は自分の目で見ていない」と気付いた生江さんは、いてもたってもいられずスクーバダイビングのライセンスを取得。その後、より身軽なスキンダイビングにはまって都内から神奈川県葉山町の海に通うようになった。「海に潜ると、凄くおいしそうな魚が泳いでいるんです。命がそこにある、その生き物がいる、ということの素晴らしさとありがたさを感じました」

やがて、プロのフリーダイバーの武藤由紀さんと知り合い、より長く深く潜れるフリーダイビングの技術を46歳の時に習い始めた。「漁村では年上の海女さんたちと会いますし、ジャック・マイヨールは49歳で人類初の100m潜水に成功し、ナタリア・モルチャノワは47歳で女性初の100m超を成し遂げています。精神的なところとの重ね合わせや、自分の体の調子を知ることが大事なフリーダイビングというスポーツは、40代後半で始めても全く遅くないと感じました。正しい潜り方を教えてくださる先生がいたからこそですけどね。精神を整え、体を鍛えて、これからも潜り続けたいです」

厨房を出て、身ひとつで潜行する豊かな時間。写真:武藤 由紀

長く続けたいと願う背景には、使命感もある。長年潜ってきたダイバーたちから相模湾の海藻の盛衰を教わった生江さんは、バトンを渡されたように感じたという。冬の同じ海域に2年連続で潜り、水温が4℃違うと想像以上に体感が変わることを肌で知った。そして水温が高かった年は漁業者から「わかめが消えちゃった」と聞き、低かった年は「養殖も天然も割と調子いいよ」と聞いて、わかめはこのぐらいの低温が快適なのか、と体感と知識が一致した。「僕の残された人生で海の中を見続けて、海の中の変化を次の世代に伝えていかなきゃいけないと思っています」。研究者肌のシェフなのだ。実際、生江さんは今、東京大学大学院農学生命科学科に通う大学院生でもある。所属するのは食料・資源経済学の研究室。「フードシステム内での外食産業の機能と分類」をテーマに修士論文を書いている。

「生産者から産物をもらって加工して消費者に届けるという、一連のフードシステムの真ん中で仕事をしているので、日本人はどういう考えで食を選択しているのか、以前から興味がありました。僕一人がCO2の出ない食を選ぼう、と言っても国民の同意は得られません。では、なぜ得られないのかというメカニズムを科学的に考えたい。いろいろな人と分かり合うためのベースを、学問の中から技術として取り入れたいんです」

水面下に広がる海の森。藻場は「海のゆりかご」として多種多様な生き物の生存と繁殖を支えている。写真:武藤 由紀

生江さんは2016年にオーストラリアのノーザンテリトリーにあるやバワカ(Bawaka)地区でアボリジニのコミュニティを訪問する機会を得た。「彼らは海岸でボラをつかまえて夜のおかずにして、食後は談笑して朝まで寝ます。朝ごはんは食べず昼前にボートで海に出て簡単に大きな魚2匹を釣ってきて昼と夜に食べる。雨の日はマングローブの中で大きなマッドクラブ(カニの仲間)や貝類をとる。マッドクラブの爪は、子どもがキャンディのようにしゃぶるほど甘いんです。簡単に食べ物が手に入って、しかもお腹いっぱい食べられて、労働時間は1日3時間ぐらい。そうやって5万年も生きてきた人々です。彼らは、人間は生まれながらに半分の存在で、残りの半分を探し、その存在によって自分が完全になるというアイデンティティを持っています。残り半分が海や空の人もいれば、魚やワニの人もいる。自然を、手なずける対象ではなく、自分と一体化するものと捉えているんです」。彼らとの3泊4日は「人生がひっくり返されるような体験」だったという。

バワカの民と。

2022年の世界海洋デーの会議では、伝説的な海洋学者であるシルビア・アール博士が講演した。彼女の「海の再生というのは結局、海に対する人間の意識の再生です」という言葉に、自然を遠ざける都市生活に危うさを感じている生江さんは、強く共感した。「僕らは、バワカの人々のような『海がなければ自分は存在し得ない』という感覚を失ってしまいました。だけどもう、再び自然に接して自分の命と他の命がどうやって共存し合っているのかを感じ直さないといけないフェーズに来ていると思うんです。海に一歩でも近付くこと、楽しみを見つけて海に触れ合っていくこと。この『一生懸命遊ぶこと』が、実は海の再生と、海に対する人間の意識の再生につながるのではないでしょうか。自然との再接続は、いろいろな問題の解決の糸口になるはずです。子どものような好奇心で一つ一つのことに挑んでいく真剣な遊びを、学び楽しみながら生涯続けていくには知恵や工夫が必要で、そのためには水先案内人になってくれる方々を大切にしなきゃいけません。いつか自分が誰かの水先案内人になれるよう、これからも遊んでいきたいです」。そう言って、生江シェフは少年のような笑顔を見せた。

2022年5月にダイバーの武藤さん主催のイベントに参加して、地元の子どもたちと海の中へ。写真:山下 梨恵

The Ocean Solution
海の解決策

パタゴニア プロビジョンズは、米国の海藻と貝の環境再生型養殖に挑戦する一人の漁業者を紹介するショートフィルム『The Ocean Solution(海の解決策)』を2022年7月に公開しました。
瀬戸内 千代
海洋ジャーナリスト。書籍、雑誌、NPOの機関紙、ウェブメディア等の編集ライターとして、環境問題に対するレポートやニュースを発信している。特に海に関する記事多数。

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