スパイスの調達
スパイスの調達
風味豊かでまろやかな辛さのアルゼンチン産唐辛子のアヒ・クリオージョは、パタゴニア プロビジョンズの3種類のスパイス製品、アヒ・モリド(粗挽き赤唐辛子)、チミチュリ、タコス・シーズニングの主原料です。このアヒ・クリオージョはパートナーの〈モリノ・セリヨス〉によって栽培され、アルゼンチン初のオーガニック認証を受けました。
アヒ・モリド(粗挽きしたアヒ・クリオージョ)は、チミチュリにまろやかな辛さと香ばしさを加えます。この酸味のあるソースなしではアサド(アルゼンチン風バーベキュー)とは言えず、ロクロ(レンズ豆やカボチャが入ったシチュー)やエンパナーダ(具材を包んだパン)にも欠かせません。料理にちょっとアクセントを付けたいときにもさっと振りかけます。プロビジョンズでは、スパイシー・レッドビーン・チリ、RO チリ・マンゴーなどにもアヒ・モリドで少し辛味を加えています。
標高2,500メートルで栽培
アルゼンチン産アヒ・クリオージョの大半は、アルゼンチン北西部にあるサルタ州の海抜の低い地域で生産しています。湿度が高いため、唐辛子がうどん粉病になりやすく、防カビ剤なしでの栽培は困難です。しかし探しているのは防カビ剤不使用のオーガニックのものでした。すこし時間がかかりましたが、ついにモリノ・セリヨスを見つけたのです。
モリノ・セリヨスはサルタ州の香辛料会社で、アヒ・モリド用の粉末唐辛子のほか、複数の種類のチリやスパイスの生産、さらにチアシード、ゴマ、豆類の加工もしています。オーナーのフェルナンド・ダバロス氏は、州南西部のタキルという町に近い乾燥した高原に家族農場を営んでいます。ここならうどん粉病は生じません。オーガニック・チリの栽培に最適であり、ダバロス氏は2016年にパタゴニア プロビジョンズと提携し、アルゼンチン初のオーガニック・アヒ・クリオージョの栽培と加工をはじめました。
彼の一族が1800年代初期から所有する土地は、まるでギザのピラミッドのような険しい山々と谷を含め、30万エーカー(約12万ヘクタール)におよびます。標高2,500メートルではどの栽培も不可能に思えますが、200エーカー(約81ヘクタール)が耕作されています。その一部はブドウ園で、ダバロス氏の先祖が19世紀に創業し、父と兄が経営する〈ボデガ・タキル〉は濃厚な香りのマルベックとカベルネで有名です。農場ではかつて辛みのないパプリカを栽培しており、ダバロス氏が子供の頃は兄弟姉妹たちと収穫後の赤いパプリカの山のなかでかくれんぼをしていたそうです。
この農場はかなり辺境の地にあり、ダバロス氏が子供の頃は、州都サルタからタキルまでラバに乗って4、5日もかかったそうです。電話が設置されたのが1995年で、十分な電力が来たのが2018年、現在でもサルタから非舗装の山道や岩だらけの川床を何時間もかけて車で走る必要があります。
産地に根差した風味
この荒々しい地形は、プロビジョンズのオーガニック・チリへの取り組みにさまざまな困難をもたらしました。資材の持ち込みはもちろん、オーガニック認証を受けるための監査官をブエノスアイレスから派遣しなければなりません。
しかし努力の甲斐はありました。タキルのアヒ・クリオージョは防カビ剤不使用だけではなく、風味が他とは違うのです。ダバロス氏のチームは、タキルの標高と乾燥した空気、乏しい水、養分の少ない石灰岩質の土壌により、植物が強く育ち、より深みのある濃い味わいを生み出すと考えています。ワイン用のブドウが独自の風味を持っているのと同様です。唐辛子の辛さを和らげるものは何でしょうか。最も可能性が高いのは気候です。32℃を超えることは決してなく、通常は10~15℃あたりです。
アヒ・クリオージョは7月に温室で種から発芽させ、11月に屋外に移植します。翌年の5月の収穫期までには真っ赤に熟します。風味を凝縮させるために、枝に実らせたままの状態で乾燥させます。実が乾燥しはじめたら鮮やかな色を保つため、株ごと引き抜いて木陰に寝かせておきます。乾燥した実を摘み、トラックでサルタのモリノ・セリヨスの工場に運びます。そこで粉にしてすばやく蒸して殺菌した後、プロビジョンズへ出荷します。
ダバロス氏にとって、先祖代々の農場がオーガニック生産に進化し、美しい故郷を豊かにするとともに、会社が変化していくことは意義のあることです。「従業員たちが日々、責任あるチリ栽培により熱心に取り組むようになり、仕事に喜びを見出す姿を見ることは、私にとって大きな喜びです」